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2019年7月4日【テクノロジー】

NEDO+シャープ+トヨタ、太陽電池搭載EVの公道走行実証

NEXT MOBILITY編集部

産業技術総合開発機構(NEDO)とシャープ、トヨタ自動車の3者は、高効率太陽電池を電動車に搭載することによる、EV航続距離や燃費向上効果の検証を目的とした、公道走行実証を7月下旬から開始する。

 

実証車は、7月10日(水)から12日(金)までパシフィコ横浜で開催される「第14回再生可能エネルギー世界展示会」のNEDOブース内で展示される。

 

 

 

 

[概要]

 

NEDOは、2016年4月に産学の有識者からなる「太陽光発電システム搭載自動車検討委員会(※1)」を設置し、運輸分野のエネルギー・環境問題の解決を目的として、太陽光発電システム搭載自動車に関する調査・検討を行ってきた。

 

同委員会には、シャープやトヨタも参加しており、これまでの成果として、「変換効率30%以上の太陽電池モジュールを使用すれば、自動車のような限られた設置面積においても、1kWの発電電力を実現することが可能である」、「ユーザーの利用パターン次第では、年間の充電回数をゼロにすることが可能である」、「CO2排出量削減効果が期待できる」と試算(※2)している。

 

試算に基づき、NEDOとシャープ、トヨタは、高効率太陽電池を自動車に搭載することによる、EV航続距離や燃費向上効果の検証を目的とした、公道での走行実証を7月下旬から開始する。

 

 

 

 

この実証を行うにあたり、シャープはNEDO事業(※3)の一環として開発した世界最高水準の高効率太陽電池セル(※4)(変換効率34%以上/※5)を、車載用にモジュール化して太陽電池パネルを製作。

 

トヨタは、「プリウスPHV」のルーフやフード、バックドアなどに同パネルを搭載し、公道走行用実証車を製作した。

 

 

 

 

太陽電池パネルの高効率化と搭載面積の拡大によって、定格発電電力は市販の「プリウスPHV(ソーラー充電システム装着車)」と比べて約4.8倍の約860W(※6)を実現している。

 

トヨタは、愛知県豊田市や東京都などにおいて、さまざまな走行条件下で走行実証を行い、太陽電池パネルの発電量や駆動用バッテリーへの充電量などのデータの検証。今後の車載ソーラー充電システムの開発に活かしていく。

 

 

<プリウスPHVの市販モデルと実証車の性能比較>

 

 

※:ソーラー充電システムによる駐車中または走行中における、最大充電量のJC08モード電費換算値。太陽光発電協会の定める「表示ガイドライン(平成27年度)」に基づき、車両搭載システムの各損失を考慮し算出した。日射量は名古屋地区、1990から2009年までの平均年の日ごとのデータ(出典:NEDO)を使用。

 

 

[実証車の概要]

 

実証車に搭載する太陽電池パネルは、変換効率34%を超える複数の太陽電池セルを使用し、モジュール形状、耐環境性能、表面の材料などは、トヨタが実施する走行実証の仕様に基づき決定した。

 

太陽電池セルは、約0.03mmの薄いフィルム状で、自動車のルーフやフード、バックドアなどの限られた設置面積の場所にも曲面形状に沿って効率よく搭載することができるため、実証車では、約860Wの定格発電電力を実現。

 

発電電力の向上に伴い、「プリウスPHV」では駐車中にのみ行っていた駆動用バッテリーへの充電を、実証車では走行中にも行えるシステムを採用。これにより、EV航続距離や燃費の大幅向上が見込まれる。

 

 

 

 

<太陽電池パネル概要>

 

– 構造:化合物3接合型※7
– 変換効率:34%以上(太陽電池セル単体)
– 搭載部分:ルーフ、フード、バックドア、バックドアガーニッシュ

 

 

複数の太陽電池セルにより構成された太陽電池パネル

複数の太陽電池セルにより構成された太陽電池パネル

 

 

[今後の予定]

 

トヨタによる実証データの一部はNEDO・シャープにも共有され、「太陽光発電システム搭載自動車検討委員会」などで、CO2削減効果をはじめ、充電回数低減などの利便性向上効果などを評価。

 

運輸部門を含めた太陽電池パネルの新規市場創出とエネルギー・環境問題解決へのさらなる貢献を目指す。

 

 

 

※1)太陽光発電システム搭載自動車検討委員会:太陽光発電システムの「新たな市場創出」と「エネルギー・環境問題解決へのさらなる貢献」を目的として、自動車搭載用太陽光発電システムについて調査・検討するため、2016年4月にNEDOが設置した。

 

※2)試算:自動車への太陽光発電システム搭載時における①CO2排出削減効果、②ユーザーの利便性(充電回数)、③太陽光発電システム搭載自動車が普及した際の社会全体のCO2排出削減効果について検討し、その結果を中間報告書として2018年1月に公表した(https://www.nedo.go.jp/news/press/AA5_100909.html)。

 

※3)NEDO事業:【事業名】高性能・高信頼性太陽光発電の発電コスト低減技術開発/革新的新構造太陽電池の研究開発/超高効率・低コストIII―V化合物太陽電池モジュールの研究開発。【事業期間】2015年度~2019年度。

 

※4)高効率太陽電池セル:上記(※3)NEDO事業にて開発を実施。7円/kWhを実現する発電事業用途を想定するものだが、同件においては、高い変換効率に着目し、自動車搭載用途の可能性を検討する(https://www.nedo.go.jp/news/press/AA5_100571.html)。

 

※5)変換効率34%以上:国際規格として定められた太陽電池評価時の基準太陽光AM1.5G条件下におけるセル出力値(シャープ測定)から算出。

 

※6)約860W:セル出力値(シャープ測定)から算出したモジュール出力の合計。

 

※7)化合物3接合型:インジウムガリウムリン(InGaP)、ガリウムヒ素(GaAs)、インジウムガリウムヒ素(InGaAs)などの化合物を接合。

 

 

■(NEDO)「第14回再生可能エネルギー世界展示会」への出展:https://www.nedo.go.jp/events/FF_100121.html

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松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。