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2019年11月14日【アフター市場】

損保ジャパンと理研、自動車走行データ解析でAI技術開発

NEXT MOBILITY編集部

 

 

損害保険ジャパン日本興亜(損保ジャパン日本興亜)と理化学研究所(理研)革新知能統合研究センター(AIPセンター)は、交通事故予測のための共同研究の成果として、「運転データによる大規模ドライバー識別技術」と「多重比較補正を利用した統計的軌跡マイニング技術」を開発した。

 

損保ジャパン日本興亜は、交通事故削減を目的に提供する、スマートフォンやドライブレコーダーを用いた安全運転支援サービスの「スマイリングロード」、「ポータブルスマイリングロード」および「DRIVING!」から収集される大量の自動車走行データを活用したさまざまな情報・サービスを開発・提供している。

 

また、2015年の「スマイリングロード」提供と同時に、自動車走行データ活用のための研究チームを社内に立ち上げ、機械学習技術の研究開発およびサービスへの実用化を推進。2018年3月には、機械学習技術の研究開発拠点である理研AIPセンターと共同研究を開始し、同センター内の複数のグループと共同研究チームを組成、研究開発を進めてきた。

 

両社は、今回開発した技術により、自動車走行データの形式・特性に合った柔軟で効果的な解析ができるようになるため、今後、交通事故予測や運転支援に関する高度なサービスの提供が可能になるとしている。

 

なお同技術は、人工知能関連の国際会議である「2019 IEEE International Conference on Systems,Man, and Cybernetics(SMC/※1)」および「ACM SIGSPATIAL International Conference on Advances in Geographic Information Systems 2019(ACM SIGSPATIAL 2019/※2)」で、発表される。

 

※1:10月6日からイタリア(バーリ)で開催。
※2:11月5日から米国(シカゴ)で開催。

 

 

[技術概要]

 

(1)運転データによる大規模ドライバー識別技術

 

(理研AIPセンター ヒューマンコンピュテーションチーム:鹿島久嗣チームリーダー)

 

同技術は、スマートフォン用のカーナビアプリ「ポータブルスマイリングロード」で収集された運転データをもとに、数千人規模のドライバーを対象とした大規模識別問題に機械学習を応用したもの。

 

例えば、ドライブレコーダーを用いた法人向け運転診断では、複数のドライバーが同一車両を運転し、運転データが混在した場合、運転データのみでの対象ドライバーの特定は困難になるが、機械学習の活用で、混在した運転データをドライバーごとに効率的に分類できるようになることが期待されると云う。

 

なお、最大1万人を対象としたドライバー識別実験では、評価用の手法と比較して、高い精度でドライバーを識別できることが示された(図1)。

 

図1.予測モデルの識別精度の比較

 

 

【論文情報】

– 題目:Large-scale Driver Identification Using Automobile Driving Data.
– 著者:Daiki Tanaka, Yukino Baba, Kashima Hisashi, Yuta Okubo.
– 発表:In Proceedings of 2019 IEEE International Conference on Systems, Man, and Cybernetics (SMC), 2019.

 

(2)多重比較補正を利用した統計的軌跡マイニング技術

 

(理研 AIP センター データ駆動型生物医科学チーム:竹内一郎チームリーダー、同圧縮情報処理ユニット:田部井靖生ユニットリーダー)

 

Trajectory Mining(※)における統計的信頼度を評価するための新たなアプローチとして、Statistically Discriminative Sub-trajectory Mining(Stat-DSM)という手法を提案。

 

例えば、事故歴有ドライバーと事故歴無ドライバーのような、異なる属性を持つ2グループ間で、その移動軌跡のパターンに差異があるかを調べ、一方のグループで特徴的に発生する軌跡パターンを検出したい場合(図2)、現実に観測されたデータには観測誤差が含まれることから、計算時に統計的な評価をしながら軌跡パターンの抽出を行う必要がある。

 

従来の手法では、大規模なデータセットの計算に適用することは困難だったが Stat-DSM では、木構造と呼ばれるデータ構造に軌跡パターンを格納し、統計的推論を適用することで、大規模な実データに対する計算を可能とした。

 

(※)走行データをはじめとする、移動体の軌跡データを扱うための分析手法。

 

図2.比較グループ間での軌跡パターンの差異

 

 

【論文情報】

– 題目:Statistically Discriminative Sub-trajectory Mining with Multiple Testing Correction
– 著者:Duy Vo Nguyen Le, Takuto Sakuma, Taiju Ishiyama, Hiroki Toda, Kazuya Arai, Masayuki Karasuyama, Yuta Okubo,Masayuki Sunaga, Yasuo Tabei and Ichiro Takeuchi
– 発表: ACM SIGSPATIAL International Conference on Advances in Geographic Information Systems 2019 (ACMSIGSPATIAL 2019)

 

 

 

今後、損保ジャパン日本興亜は、開発した技術の研究成果をもとに、提供する安全運転支援サービスで、事故リスク評価モデル等を支える基盤アルゴリズムとして実用化することを目指す。

 

また損保ジャパン日本興亜と理研は引き続き、共同研究を通じて、現実課題を起点に機械学習技術の発展と社会実装に貢献すべく、先端情報科学に関する研究開発の体制強化を進める。

 

両社は、共同研究の成果をもとに、安全運転に資する革新的な要素技術を搭載したサービスの提供を目指し、“事故の無い社会”の実現を支援していくとしている。

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松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

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