NEXT MOBILITY

MENU

2019年8月7日【エネルギー】

損害保険ジャパンのSDGs意識調査で認知率の低さが露呈

NEXT MOBILITY編集部

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
SDGs

 

 

損害保険ジャパン日本興亜は「社会的課題・SDGsに関する意識調査」を実施し、その結果を8月7日に公表した。損保ジャパン日本興亜・ロゴ

1.調査実施の背景

 

貧困問題、大規模な自然災害の発生・増加、テロやサイバー攻撃などの新たなリスクの増大などさまざまな社会的課題があるなか、2015年9月、国連サミットで「持続可能な開発目標(※/Sustainable Development Goals:以下「SDGs」)」が全会一致で採択された。

 

これを受け、日本国内では政府・企業・NPOなどの各種団体をはじめ、多くのセクターがその達成に向け取り組んでいる。

 

SDGs達成には、企業に求められる役割・期待が大きく、企業経営層におけるSDGsの認知度は徐々に向上、今後、本業を通じた取組みの加速が期待されている。

 

このような中、損害保険ジャパン日本興亜では、企業の社員や一般消費者が、SDGsについてどの程度認識しているのかを確認するため、調査を実施。調査は、昨年3月にも一度実施されたが、今回はその時点からの企業の社員や一般消費者の意識の変化を調査する目的で実施された。

 

 

※「持続可能な開発目標(SDGs)」とは、2015年9月の国連サミットで採択された「持続可能な開発のための 2030アジェンダ」で記載された2016年から2030年までの国際目標。

持続可能な世界を実現するための17のゴール・169のターゲットから構成され、地球上の誰一人として取り残さない(leave no one behind)ことを誓っている。SDGsは、発展途上国のみならず、先進国自身が取り組むユニバーサル(普遍的)な目標となっている。

 

 

2.調査概要

 

(1)調査期間:2019年7月18日~7月26日
(2)調査方法:インターネットアンケート調査
(3)調査対象:全国在住の20歳以上の男女
(4)回答数 :1,074人

 

 

 

3.調査結果の概要

 

■「SDGs」という言葉を約70%が「知らない」と回答し、一層の認知度向上が必要であることがわかった(Q1)。

 

■「SDGsの達成」や「社会的課題」を意識し、行動している人は25.4%にとどまった。具体的な行動は、「エコバックの使用」や「日用品の詰め替えを使用する」「プラスチック容器をリサイクルに出す」など、日常の生活の中で取り組めるものが多く見られた(Q4,Q5)。

 

■一方で、海洋プラスチック問題を認識している人は85%超となり、約70%が深刻な問題ととらえていることがわかった(Q6,Q7)。

 

■「SDGsの達成」や「社会的課題」の解決に向けて企業に期待する役割は「社会的課題の解決に資する商品・サービスの開発・提供」が前回の25.7%から39.6%と大幅に上昇し、本業を通じた具体的な貢献が期待されていることがわかった(Q8)。

 

■社会的課題の解決に取り組む企業の製品・サービスを購入したいと考える一般消費者は60%を超えた(Q9)。

 

■日本でSDGsの取組みを推進していくうえで必要だと思うことは、「国民の当事者意識の醸成」が最も多く、認知度向上による意識の醸成が必要であることがわかった(Q11)。

 

 

4.調査結果

 

Q1.「SDGs」という言葉を知っていますか? (回答者数:1,074人)

 

「よく知っている(11.8%)」「まあまあ知っている(19.4%)」と回答した人は、前回から5.3ポイント高まり31.2%になったが、約70%の人が「知らない」という結果になった。

 

 

 

 

Q2.国内の「社会的課題」と聞いて連想するものは何ですか? (回答者数:1,074 人、複数回答可)

 

日本国内における社会的課題は、「福祉・介護、高齢化社会」が66.8%と圧倒的に高い結果となった。2番目は、前回の「貧困問題」から「気候変動・異常気象(43.4%)」に代わり、昨今の台風・集中豪雨等に対する関心が高いことが確認された。「気候変動・異常気象」は前回と比べて4.8ポイント増え、国内における重要な課題と認識している人が多くいることがわかった。

 

 

 

 

Q3.海外の「社会的課題」と聞いて連想するものは何ですか? (回答者数:1,074 人、複数回答可)

 

海外の社会的課題は、前回同様に「貧困問題(60.7%)」「戦争・紛争・テロ(59.5%)」が高く、日本国内における関心事と異なることがわかった。一方、「気候変動・異常気象」は 44.2%と、日本国内と同様の傾向が確認された。

 

 

 

 

Q4.日常生活において、「SDGsの達成」や「社会的課題」を意識し、何らかの行動を起こしていますか? (回答者数:999人)

 

「意識し、行動している(7.2%)」「何かのきっかけで意識したときに行動することがある(18.2%)」と、何らかの行動をしている人は25.4%と前回(25.1%)同様の水準にとどまり、具体的な行動に移せていない人は 70%超となった。

 

 

 

 

Q5.Q4 の質問で、「行動している」と回答した方に質問します。具体的にどのような行動をしていますか? (回答者数:254人)

 

「エコバックの使用」や「日用品の詰め替えを使用する」「プラスチック容器をリサイクルに出す」など、日常の生活の中で取り入れられる行動が多く見られた。

 

 

 

 

Q6.海洋プラスチック問題を知っていますか? (回答者数:1,074人)

 

「知っている」と回答した人が57.2%となり、多数の報道等による影響がうかがえた。「聞いたことはあるが、詳しくは知らない(28.3%)」を加えると、認識をしている人は 85%超となった。

 

 

 

 

Q7.「Q7 「海洋プラスチック問題」と聞いて、どの程度深刻な問題だと感じますか? (回答者数:1,074人)

 

約70%の人が海洋プラスチック問題を「地球規模での深刻な問題だと思う」と感じていることがわかった。「日本にはあまり関係ない問題だと思う」「そこまで深刻な問題だとは思わない」と考える人は約10%であり、関心の高さがうかがえた。

 

 

 

 

Q8.企業が「SDGsの達成」や「社会的課題」の解決に向けて果たすべき役割で、最も期待するものは次のうちどれですか? (回答者数:999人)

 

「社会的課題の解決に資する商品・サービスの開発・提供」が前回の25.7%から39.6%と大幅に上昇。次いで「人材や知識の提供(14.0%)」「社会貢献活動の拡充(12.8%)」となり、企業の本業を通じた、社会的課題解決への貢献が期待されていることがわかった。

 

 

 

 

Q9 .「SDGsの達成」や、「社会的課題」の解決に取り組んでいる企業の商品・サービスを使用・購入したいと思いますか? (回答者数:999人)

 

「そう思う(使用・購入したい)(22.4%)」「一定程度、影響すると思う(40.7%)」と答えた人が前回の53.8%から63.1%に上昇し、企業の「SDGsの達成」や「社会的課題解決」への取組みが、徐々に商品・サービスの選別に影響を与えていることがわかった。

 

 

 

 

Q10. 「SDGsの達成」や、「社会的課題」に取り組んでいる企業と判断するのはどのような点ですか? (回答者数:999人)

 

「企業ホームページや広告などで取組みが開示・公表されている」が49.0%、「社会貢献活動を数多く行っている」が 35.8%と、企業活動における社会貢献活動をホームページなどで消費者にわかりやすく伝えることが重要とわかった。

 

 

 

 

Q11. 日本でSDGsの取組みをさらに推進していくうえで、必要だと思うことは何ですか? (回答者数:999人)

 

「国民の当事者意識の醸成」が43.0%、「CM等の広告活用によるSDGsの認知度向上」が39.4%、「具体的な取組み事例の紹介」が38.1%と、SDGsの取組みへの認知度を高め、自分たちで対応できる事例を認識していくことが重要と考えていることがわかった。

 

 

 

 

 

[識者コメント]

 

調査の結果を受けて、SOMPOリスクマネジメント株式会社 コーポレート・リスクコンサルティング部 ESGグループグループリーダー 米倉 寛人氏は、以下のようにコメントしている。

 

「社会全般のSDGsの認知度はまだ十分には高いとは言えないアンケート結果となっています。一方で、公共交通機関や街中で、SDGsバッジを胸に付けて歩くビジネスパーソンも度々見かけるようになりました。

 

さまざまな業種の民間企業や地方自治体、組織を挙げてSDGsの取組みを進める動きがあるため、SDGsの研修等を受けた会社員が、家に帰ってその話題を家族でも会話するなどして、さらにSDGsの認知度は高まっていくのではないかと推察されます。

 

企業等は、既存の事業内容等をSDGsの17の目標に結びつけてホームページ等で公表したり、SDGsに対する取組みを中期経営計画に盛り込む例が見受けられます。17の目標と既存事業との結びつけに留まることなく、社会的課題に対するニーズを捉えて、新たなビジネスチャンスを創出しつつ社会的課題を解決に導くことがSDGsの取組みとして求められているため、この次のステップの取組みが増えていくことが期待されます。

 

また、企業、一般消費者ともに、SDGsへの貢献へ向けた取組みや商品・サービスが、実際に環境・社会課題を『どれくらい解決したか』、その効果にも注目することが重要です。

 

本アンケート結果は、社会的課題に対するステークホルダーのニーズを表す情報のひとつとして、自組織の事業や方針と照らし合わせてSDGsに対する取組みを検討する際の情報として活用できるものと思います。

 

一般消費者としては、自分に関わり合いのある企業や自治体が、表面的な取組みではなく、事業内容に則した、または新たなチャレンジとして社会的課題の解決に資する活動を行っていることを意識して見ていくことが重要と考えます」。

 

 

■損害保険ジャパン日本興亜:https://www.sjnk.co.jp/

CLOSE

坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。