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2022年9月9日【トピックス】

国交省、日野へ型式指定に係る違反の是正命令

NEXT MOBILITY編集部

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日野・外観

 

 

国土交通省は9月9日、日野自動車への立入検査の結果を踏まえ、基準不適合が確認されたエンジンの型式指定取消に向けた手続きを開始する一方で、基準適合が確認されたエンジンについては、出荷再開を認めると発表。また、法令違反につながる不正行為を行った日野の体制については、二度とこうした不正行為を起こさないための抜本的な改革を促すべく、「型式指定に係る違反の是正命令」を発出した。

国交省は8月2日、日野自動車から型式指定に係る排出ガス・燃費性能試験に於ける不正行為に係る報告を受け、その事実関係の確認等のため、翌3日から同社に対して断続的に立入検査を実施。この立入検査の結果を踏まえ、型式指定に係る試験に於いて不正が行われたエンジンについて、以下の対応を行うことを発表した。

 

(1) 立入検査の結果、排出ガス性能が基準に満たないと確認されたエンジン(トラック・バス用エンジン1機種、建設機械等用エンジン3機種)は、型式指定の取消に向けた手続きを開始する。

 

(2) 立入検査の結果、排出ガス性能が基準に適合していると確認されたエンジン(トラック・バス用エンジン3機種、建設機械等用エンジン4機種)は、出荷再開を認める。

 

(3) 法令違反につながる不正行為を行った日野の体制については、二度とこうした不正行為を起こさない体制への抜本的な改革を促すべく、是正命令(型式指定に係る違反の是正命令)を発出した。

 

 

[型式指定に係る違反の是正命令概要]

 

1.是正命令

 

・道路運送車両法(第75条第7項、第75条の2第4項及び第75条の3第5項)に基づき、型式指定に係る規定に関する違反を是正するために必要な措置をとるべきことを命じるもの。

 

2.主な違反項目

 

・型式指定申請時の、試験データの改ざん、法規に基づかない測定、測定機器の不正操作等による、申請書における排出ガス・燃費に係る虚偽記載(自動車型式指定規則第13条、共通構造部型式指定規則第15条、装置型式指定規則第15条等違反)。

 

・不正行為の結果、指定を受けた型式としての排出ガス、燃費性能を有していない(自動車型式指定規則第7条の4、共通構造部型式指定規則第7条、装置型式指定規則第7条違反)。

 

3.不正事案の原因となった問題と日野が講ずべき措置(概要)

 

①型式指定申請体制に於ける問題

 

・型式指定申請関連業務の兼務、監視・牽制機能の不足。
・法令に関する理解の不足。
・作業要領等の社内規程の不備、不適切な運用。

 

講ずべき措置:不正行為を起こし得ない型式指定申請体制の構築(社内チェック体制の強化)

 

・型式指定申請業務を担う法規認証部の開発部門からの独立性の担保及び検証機能の強化。さらに、法規認証部の行う試験が適切に行われていることを監視・牽制する仕組みの構築・実施。

・型式指定申請に係る試験に関わる職員に対し、法規制の目的や重要性等の理解を促すための教育の徹底。

・型式指定申請に係る試験等について、結果の記録方法や社内の共有方法等に係る作業要領等の整備。

 

②開発部門の業務実施体制に於ける問題

 

・コンプライアンスの欠如。
・セクショナリズム。
・投入するリソースの不足、工程管理の不備。

 

講ずべき措置:開発部門の業務実施体制の改善(コンプライアンス強化・開発体制の見直し)

 

・開発部門の職員に対し、法規の内容の理解を促し、コンプライアンス重視の意識を醸成するための教育を実施。

・各担当のみで課題解決を図るのではなく、担当間で連携して課題解決を図る仕組みの構築等、セクショナリズムを廃するための具体策の立案・実施。

・人材や設備等のリソースを勘案し、無理のない形でプロジェクトの規模や開発期間を設定する等、開発部門長の責任の下、開発体制を管理。

 

③社内全体の技術管理体制に於ける問題

 

・風通しの悪い組織風土。
・人事の固定化。
・ガバナンスの欠如。

 

講ずべき措置:社内の技術管理体制の再構築(組織風土の抜本的改革・ガバナンス強化)

 

・経営陣等は、二度と不正を起こさないという覚悟と決意を会社の内外に示しつつ、コンプライアンスの徹底に取り組むと共に、パワハラの根絶はもとより、上位者に対して臆することなく意見具申できるよう組織風土を改善。

・不正が生じやすい組織体系となっていないか見直すと共に、人事流動性を上げるなど人事のあり方についても見直し。

・経営陣等による、現場の状況や意見を常時把握するための仕組みの構築、今回の不正事案の教訓を基にした教育の徹底など、ガバナンスの強化を通じた自浄能力の創出に向けた具体策の立案・実施。

 

 

[問い合わせ先]

 

国土交通省自動車局審査・リコール課 是則、衣本
電話:03-5253-8111 (内線42301、42302)直通 03-5253-8595
FAX:03-5253-1640

 

 

■(国交省)型式指定に係る違反の是正命令(全文/PDF):https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001512122.pdf

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。