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2018年10月16日【経済・社会】

KYB、免震・制振用ダンパーの検査データを改ざん

NEXT MOBILITY編集部

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KYBと子会社のカヤバシステムマシナリーは、10月16日、建築物用の免震・制振部材としてしたオイルダンパーの一部について、性能検査記録データの改ざんにより、大臣認定の性能評価基準に適合していない、または、顧客の基準値を外れた製品(不適合品)を建築物に取り付けていた事実が判明、国土交通省に報告を行うとともに、対応状況について公表した。

KYB・ロゴ

KYBは今後、不適合品を早急に交換し、現在、改ざんの有無が不明な製品についても交換を前提として、引き続き調査を進める。

 

また、所有者、居住者等の不安・心配を払拭することを経営の最優先事項とし、具体的な対応方針等については、国土交通省及び関係行政機関の指導の下、建設会社、設計事務所に報告の上、安全性の検証を行い、所有者をはじめとする関係者に説明するとしている。

 

KYB及びカヤバシステムマシナリーにおける免震・制振用オイルダンパーの生産の変遷及び、現在、社内調査で判明したとする内容は、以下の通り。

 

1.免震・制振用オイルダンパーの生産変遷

 

1)1962年に制振用オイルダンパーの生産を開始し、1986年に同社相模工場にて免震用オイルダンパーの生産を開始。

 

2)2000年3月に免震・制振用オイルダンパーの生産を相模工場から岐阜南工場に移管し、2007年1月に、岐阜南工場からカヤバシステムマシナリーに事業を譲渡。

 

 

2. 改ざんの期間及び不適合品について

 

1)改ざんがなされた可能性が高いと考えられる期間は、2003年1月から2018年9月。但し、岐阜南工場で生産を開始した2000年から改ざんされていた可能性を鑑み、以下 2)の表では、2000年3月以降に製造された製品についても不明として扱う。

 

2)建築物用の不適合品及び不明の対象物件数及び対象製品数。

 

 

※1:制振用オイルダンパーについては、大臣認定制度はない。
※2:性能検査記録のデータの改ざん有無が現状において確認できない製品については調査継続中。
※3 出荷総数は、生産当初から2018年9月までの出荷総数。

 

3)不適合品及び不明(2. 2)表①~③)の都道府県別・用途別の物件数。

 

①免震用オイルダンパー

 

 

 

②制振用オイルダンパー

 

 

 

4)加えて当該オイルダンパーが橋梁にも使用されており(※4)、以下の不適合品が確認された。

 

 

※4:不適合品は橋梁にも設置されているが、これらについては建築基準法の適用がなく大臣認定制度の対象外。

 

 

3.改ざんの内容

 

<通常手順と改ざんの具体的内容>

 

1)通常手順:性能検査工程において基準値から外れた場合は、製品を分解し、基準値に入るまで調整を実施。

 

2)改ざん:性能検査工程において基準値から外れた値を改ざんし、検査記録として提出。

 

 

 

 

4.同件の判明の経緯と対応

 

1)カヤバシステムマシナリーで、同社従業員による性能検査記録データの改ざんの疑いがあるとの指摘を契機に、社内調査を開始。その結果、改ざんの禁止を指示(9月8日)。

 

2) 1)の社内調査結果について、カヤバシステムマシナリーから報告を受け、KYB内に対策本部を設置し、調査を開始(9月12日)。

 

3) 調査の結果、性能検査記録データの改ざんの事実があったとの結論に至り、国土交通省に対し報告(9月19日)。

 

4) 以降、対象製品及び対象物件の特定ならびに基準値から大きく乖離した物件の安全性検証のための構造計算実施。

 

5)外部調査委員会を設置(9月26日)。

 

6)10月5日以降、大臣認定の仕様とは異なった材質のピストンまたはパッキンが使用されていたことが判明し、国土交通省に報告。

 

7) その後、対象物件に橋梁が含まれることが判明し、国土交通省に対し報告(10月9日)。

 

5.安全性の検証

 

1) 国土交通省の指示に基づき、不適合品の中でも特に基準値(※5)からの乖離が大きいオイルダンパーが使用されている以下の7物件を選定し、第三者による安全性の検証(構造計算)を実施。

 

2) 震度6強から7程度の最大級の地震に対しても十分耐え得る結果を確認したとしている。

 

 

※5:<免震>大臣認定での基準値が±15%以内、顧客の基準値が±10%以内等。<制振>顧客の基準値が±10%以内等。

※6:乖離値がわかっている4本の数値、他に改ざん不明が11本ある。

 

3)他の対象物件についても、建設会社様、及び設計事務所の協力で、構造計算による安全性の検証を開始。

 

6. 大臣認定仕様と異なる材質の使用

 

<大臣認定仕様と異なる材質が使用されていた事案の概要>

 

1)大臣認定を受けている免震用オイルダンパーについて、ピストン、パッキン、塗料において大臣認定仕様と異なる材質を使用。

 

2)具体的には

 

①ピストンについて、

 

(ア)化学成分や機械的性質が認定仕様と同等であり、新たな認定取得は不要と誤認していた。

(イ)認定申請時に実際の材質を誤記した。

 

②塗料について、顧客の要求により認定申請書の一部に実際に使用した材質の記載漏れが存在した。

 

③パッキンについて、異なる材質が認定仕様であると誤認していた。

 

3)認定仕様と異なる材質のピストンが用いられた製品が出荷された期間は、2005年1月から2018年9月、詳細は以下のとおり(※なお、ピストンについては 2. 2)表記載の免震用オイルダン パーの数に含まれる)。

 

 

4)認定仕様と異なる材質の塗料が用いられた製品が出荷された期間は、2009年11月から2018年9月、詳細は以下のとおり(※なお、塗料については 2. 2)表記載の免震用オイルダンパーの 数に含まれる)。

 

 

5)認定仕様と異なる材質のパッキンが用いられた製品が出荷された期間は、2006年6月から2017年12月、出荷先は主に住宅。対象の113件について調査中(※なお、パッキンについ ては 2. 2)表記載の免震用オイルダンパーの数に含まれない)。

 

6)出荷製品の材質について、認定申請時に実際の材質を誤記したピストンを除き第三者機関による安全性の検証の結果、安全性に問題がない旨の見解を確認し、当該材質の仕様での大臣認定 の取得に向け、必要な手続きに着手。なお、引き続き残された課題につき安全性の確認を実施予定。

 

 

KYBは、同件の重大性に鑑み、社長をトップとする社内対策本部を設置するとともに、外部調査委員会(委員長:森・濱田松本法律事務所弁護士 難波孝一元東 京高等裁判所部総括判事)を設置し、同件の事実関係の調査、原因分析及び再発防止策の提言等を依頼。その調査結果・提言等や社外の技術的専門家の知見等を踏まえ、適切な対策を進めていくとしている。

 

なお、外部調査委員会の調査結果等については、今後、適切な時期に公表を行う。

 

また、他の製品、サービスにおける同件と類似する事案の有無に関する調査についても、既に他の事業については着手しており、今後も、外部調査委員会の助言を受けながら、社内調査を進めるとしている。

 

なお、同件が業績等に与える影響の見込みが判明次第、適宜情報開示を行っていくとしている。

 

 

[問い合わせ先]

 

KYB株式会社「免震・制振用オイルダンパーお客様ご相談窓口」

フリーダイヤル:0120-247-852 ※24時間受付対応、土・日・祝日含む

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

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(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

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経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

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1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。