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2019年11月1日【テクノロジー】

ウェザーニューズとトヨタ、ワイパー稼働で降水予測を実証

NEXT MOBILITY編集部

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ウェザーニューズとトヨタ自動車は、ウェザーニューズが持つ気象データとトヨタのコネクティッドカーのワイパーの稼働状況から得られる車両データを活用して、道路及びその周辺の状況を把握する実証実験(※1)を、東京都・大阪府・愛知県の3都府県を対象に、11月1日から開始した。

実証実験は、気象観測・予測の精度向上やドライバーの安全向上を目指す共同研究の一環として実施。

 

対象地域を走るトヨタのコネクティッドカーのワイパー稼働状況をマップに可視化し、実際の気象データと照合。ワイパーデータと気象データとの関係を詳細に分析し、降水のほかにも、ワイパーの稼働に影響を及ぼす現象を捉えることを目指す。

 

ワイパーの稼働状況は主に降水の有無と対応するため、ワイパーデータの活用により、一般的な雨雲レーダーでは捕捉できない降水状況の把握が期待できると云う。

 

トヨタは、昨年6月に販売を開始したクラウン及びカローラスポーツを皮切りにコネクティッドカーの本格展開を開始しており、今後国内で発売するほぼすべての乗用車に車載通信機(DCM : Data Communication Module)を搭載していく。

 

またウェザーニューズは、全国約1.3万地点の独自の観測網に加え、ユーザーから届く1日18万通もの天気報告を活用することで、高精度な天気予報を実現している。

 

両社はこの共同研究を通して、気象データとコネクティッドカーから得られる車両データを「いざという時に役に立つ」情報として広く提供し、ドライバーのさらなる安全への寄与を目指していく。

 

※1:実証実験では、トヨタのコネクティッドサービスを利用している車両から収集した車両データに統計処理を行ったうえで、個人が識別されない形で運用する。

 

 

ワイパーデータと気象データから正確な実況把握を目指す

 

雨天時の事故率は晴天時の約4倍とも云われ(※2)、降水の有無は車の安全運転に大きく影響する。

 

しかし降水エリアの把握や予測に用いられる雨雲レーダーは、対流圏下層(上空2km以下)の雨雲が降らせる雨や、霧雨のような小さな雨粒による雨は捉えることができないという弱点があり、降水エリアの正確な把握には困難を伴う。

 

今回の実証実験では、対象地域を走るトヨタのコネクティッドカーから得られるワイパーの稼働状況をマップに可視化し、実際の気象データと照合。

 

雨雲レーダーに映らない低い雨雲により関東で雨となった過去の事例では、「ウェザーニュース」アプリのユーザーから寄せられる天気報告のウェザーリポート(※3)で雨の報告があったエリアとワイパーの稼働エリアがおおよそ対応していたことが判明していることから、ワイパーデータの活用で、雨雲レーダーで捕捉できない降水を把握することが期待できると云う。

 

なお、実証実験ではワイパーデータと気象データとの関係を詳細に分析し、正確な降水エリアの把握のほか、ワイパー強度に対応する降水強度の推定などにも取り組み、ワイパーデータの天気予報への活用も検討する予定。

 

ウェザーニューズとトヨタは、ワイパーデータを活用し、レーダーで捉えられない降水や実際の降水強度など、道路およびその周辺の状況を正確に把握し、状況に応じた運転者への注意喚起を行い、ドライバーの安全に寄与することを目指すとしている。

 

※2:首都高速道路「晴天・雨天別の事故件数の比較」。
※3:アプリ「ウェザーニュース」のユーザーから寄せられる現地の天気報告。

 

 

 

<2019年7月7日8:30のワイパーとウェザーリポートデータ>

 

 

・ワイパーデータ(橙:稼働あり/灰:稼働なし)
・ウェザーリポート(赤丸:雨に関する報告があった地点

 

 

IoTとビッグデータで気象予測の精度及びドライバーの安全向上を目指す

 

昨今、激甚化する気象現象やそれによる被害が社会問題となっており、これまで以上に局地性・即時性のある気象情報やその対応策情報が求められている。

 

このようなニーズに応えるためには、より詳細で正確な気象状況をリアルタイムに把握することが必要となるが、既存の気象観測器では、設置場所や測定間隔が制限されてしまうという課題がある。

 

一方、IoT技術の発達で、様々な機器が通信機能を持つようになり、コネクティッドカーからは走行データや車のコンディションデータ等が発信され、車の走行や挙動に影響を及ぼす事象を捉えることが可能となった。

 

このような背景から、ウェザーニューズとトヨタは、ウェザーニューズが持つ気象データとトヨタのコネクティッドカーから得られる車両データを活用して、気象観測・予測精度の向上やドライバーの安全を目指す取り組みを開始。

 

車両データと気象データのビッグデータを組み合わせた分析により、道路およびその周辺の新たな実況把握を図る。

 

なお、両社はこの取り組みの一環として、今夏、道路の冠水箇所を推測するAIアルゴリズムを開発、10月に実証実験を行っている。

 

 

 

 

■「ワイパー稼働実証実験」特設サイト:https://tpf.weathernews.jp/v/TOYOTA/wiper/intro/

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

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1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。