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2020年2月14日【テクノロジー】

KDDI+大林組+NEC、5Gを活用した道路造成実証

NEXT MOBILITY編集部

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KDDIと大林組、日本電気(NEC)の3社は、2月3日から14日に三重県伊賀市で建設中の川上ダムの一部フィールドで、第5世代移動通信システム(5G)を活用し、3台の建設機械の遠隔操作と自動運転システムを搭載した振動ローラの同時連携に加え、工事に必要な施工管理データのリアルタイム伝送・解析による一般的な道路造成工事の施工を実施し、成功した。

 

なお、実証試験は、総務省の5G総合実証試験(※1)の一環として実施された。

建設業では、現場作業員の高齢化、若手就業者の減少による労働力不足や技能の継承が喫緊の課題であり、省人化による生産性の向上が急務となっている。

 

また、実際の建設工事では、設計データや出来形管理などさまざまな大容量データを活用して施工が行われるが、その際、測量や出来形の確認などは人の手によって行われているため、多くの時間と労力を要しており、施工の効率化が求められている。

 

そのため、専門的な技能を有するオペレーターが建機に搭乗せずとも、建機を遠隔で操作できる遠隔操作システムの活用や、工事現場におけるICTを活用したセンシング技術による作業効率化が期待されている。

 

 

[実証試験の実施概要]

 

3社は、これまで複数回にわたり5Gを活用した遠隔施工の実証試験(※2)を重ね実用化に向けた取り組みを実施。

 

今回の実証試験では、一般的な工事現場での活用を見据え、2月3日から14日まで、川上ダムの一部施工フィールドの提供を受け、5Gを活用して以下1~4を実施。道路造成工事に係る一連の作業を遠隔操作、自動化で実現できることを確認した。

 

実証試験で用いられた技術は、統合施工管理システム(※3)として、将来的には、オフィスなどの遠隔施工管理室から複数の工事現場への連続アクセスや、一人の熟練工が複数建機や複数現場への同時対応ができるよう目指す。

 

その結果、現場への移動時間や工数の削減につなげる。

 

なお、実証試験には、サムスン電子が提供する端末を含めたアクセスソリューション(※4)が用いられている。

 

 

実証試験のイメージ図

実証試験のイメージ図

 

 

1. 5Gを活用した3台の建機の遠隔操作による掘削、運搬、敷きならしの実施

 

3台の建機(油圧ショベル、クローラキャリア、ブルドーザ)に、前方映像用の2Kカメラを各3台、全方位カメラ各1台設置し、計12台のカメラ映像と遠隔操作の信号データを5Gでリアルタイムに伝送。

 

加えて、各建機の工事エリアを俯瞰する計8台の2Kカメラと、工事エリア全体を俯瞰する4K3Dカメラも活用し、土砂の掘削、運搬、敷きならしを実施した。

 

なお各建機には、5G端末と基地局を向き合わせるための仕組みとして正対装置が搭載された。

 

 

遠隔操作で掘削した土を積み込む油圧ショベル(写真右)とクローラキャリア(写真左)

遠隔操作で掘削した土を積み込む油圧ショベル(写真右)とクローラキャリア(写真左)

 

 

2. 5Gを通じた、自動運転システム搭載の振動ローラによる転圧作業の施工指示、および施工結果の取得

 

振動ローラにて敷きならしされた土砂の転圧を実施。転圧作業にあたっては、5Gを活用して自動運転システムを搭載した振動ローラと遠隔施工管理室間で、施工指示データと、振動ローラの位置情報、転圧結果、品質をリアルタイムに伝送した。

 

 

遠隔操作で敷きならしをするブルドーザ(写真右)と自動運転で転圧をする振動ローラ(写真左)

遠隔操作で敷きならしをするブルドーザ(写真右)と自動運転で転圧をする振動ローラ(写真左)

 

 

3. 5Gを活用したGNSS(※5)データ伝送による施工管理

 

上記1、2の各建機からの映像やデータ伝送と合わせて、4台の建機(油圧ショベル、クローラキャリア、ブルドーザ、振動ローラ)に設置したGNSSから取得するデータ(建機の位置情報、現場状況(施工状況)と設計値(三次元設計データ)との差異)を5Gで遠隔施工管理室に伝送し、マシンガイダンス(※6)により各建機の遠隔操作をサポートするとともに施工結果をリアルタイムに取得した。

 

 

5Gを活用してリアルタイムに建機を遠隔操作する様子

5Gを活用してリアルタイムに建機を遠隔操作する様子

 

 

4. リアルタイム3Dレーザースキャナによる土砂量や造成結果データの5G伝送

 

建機の工事エリアに3Dレーザースキャナを2台設置し、マシンガイダンスにデータを利用するとともに5Gを用いて施工現場の土砂量や造成結果のデータを伝送し、遠隔地からリアルタイムに出来形を確認した。

 

 

[実証試験での各社の役割]

 

– KDDI:5G総合実証試験の推進、5Gインフラの構築。

 

– 大林組:

・建機の遠隔操作システムの開発、試験。
・振動ローラの自動運転システムによる施工。
・リアルタイム3Dレーザースキャナの開発、試験。

 

– NEC:無線エントランス(80GHz帯高速無線伝送システムiPASOLINK EX Advanced)の提供。

 

 

※1)5G総合実証試験:電波を有効に利用できる実現性の高い技術について技術的検討を行い、その技術の早期導入を図ることを目的として、総務省が「技術試験事務」を実施している。(総務省)周波数ひっ迫対策のための技術試験事務の実施:http://www.tele.soumu.go.jp/j/sys/fees/purpose/tectest/

※2)遠隔施工の実証試験:

・KDDI、大林組、NEC 「5G」を活用し、建機の遠隔操作による連携作業に成功(2018年12月14日付):https://www.obayashi.co.jp/news/detail/news20181214_1.html

・KDDI、大林組、NEC 国内初!「5G」、4K3Dモニターを活用した建機の遠隔施工に成功(2018年2月15日付):https://www.obayashi.co.jp/news/detail/news20180215_1.html

※3)統合施工管理システム:土木施工作業における複数の作業工程(計画、機械施工、出来形、品質管理、安全管理)を統合し、遠隔地で管理運用するシステム。

※4)アクセスソリューション:5Gネットワーク(基地局、コア装置)および5G実証試験用スマートフォン。

※5)GNSS:Global Navigation Satellite Systemの略。

※6)マシンガイダンス:建設機械の操作席のモニター画面に、施工する部分の完成形などを表示し、オペレーターの操作をサポートする機能。マシンガイダンス(MG)、マシンコントロール(MC):https://www.obayashi.co.jp/solution_technology/detail/tech_d100.html

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。