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2019年2月7日【テクノロジー】

産総研、AI研究の模擬研究棟を構築へ

NEXT MOBILITY編集部

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産業技術総合研究所(産総研)は、昨年12月27日に、新しい研究施設の「サイバーフィジカルシステム(Cyber Physical System/※)研究棟」を構築した。

産総研・ロゴ

サイバーフィジカルシステム研究棟では、AI技術およびロボット技術が融合し、さまざまな機械が人と協調し、人を支援する「人・機械協調AI研究」を推進。

 

具体的には、生産分野、物流分野、創薬分野における模擬環境(ショーケース)を整備し、その模擬環境内における機械(加工機、ロボットなど)のみならず、作業者まで含めたサイバーフィジカルシステムを構築し、環境情報、作業情報をデータ化し、AI技術で処理することで、より効率的に生産性向上を図る。

 

また今後、産総研 人工知能研究センターの3つの研究チームが中心となり、民間企業と共に共同研究コンソーシアムを構築。「サイバーフィジカルシステム研究棟」を産学官一体の研究拠点とすることで、AI技術の社会実装の加速化を目指す。

 

 

 

 

[設立の経緯]

 

2016年8月2日付の閣議決定「未来への投資を実現する経済対策」による、IoT、人工知能などの技術の進展要求から、人工知能に関する研究拠点の整備し、社会実装の推進する目標が立てられ、2016年度第2次補正予算「人工知能に関するグローバル研究拠点整備事業」を、産総研で実施することとなった。

 

同事業の実施のため、産総研は、柏センターの設立および、同センター内の研究拠点の整備と同時に、臨海副都心センター内の研究拠点の整備を進めてきた。

 

 

[研究棟の施設について]

 

実環境にAI技術を適用するためには、実環境の状態をIoT技術等を用いて、あらゆるモノから集めてデータ化し、AI学習データとして利用する必要がある。

 

一方、対象とする実環境によって必要な学習データは異なるため、実環境でのAI技術の適用対象は何か、適用するためにはどのようなデータを取得すべきか、適用するための最適なIoT技術は何か、といった研究を可能とする模擬環境が必要とされる。

 

そこで、サイバーフィジカルシステム研究棟には、以下4種類の模擬環境を整備し、その仮想空間の中で働く人に対して、AI技術やロボットがどのように人を支援し、生産性向上が図られるかについて研究活動を行う。

 

①機械加工組立工場

 

切削加工機、レーザー加工機などの各種加工設備およびロボットなどの組み立て設備を有する、機械加工・組み立てを中心とする模擬工場。

 

②小規模半導体製造工場

 

小型化かつ規格化された半導体製造装置群からなる小規模製造工場(ミニマルファブ)。

 

③小規模店舗

 

コンビニエンスストアを模擬した小型模擬店舗。

 

④バイオ研究

 

創薬実験環境を模擬したバイオラボ。

 

 

[本格稼働に向けて]

 

2018年12月27日、サイバーフィジカルシステム研究棟は完工。順次研究設備などの導入を行い研究環境の整備を進め、一部研究を開始している。また、2019年4月からは、本格的な研究活動や連携活動を実施する。

 

 

[研究棟における研究内容]

 

日本では今後、高齢化社会・労働生産人口低下による影響が懸念されている。

 

研究では、こういった課題に対し、1人当たりの生産性を向上する技術や、障がい者や高齢であっても働く意思を持つ者が、少ない負担で働くための代行支援を行う技術を、AI技術やロボット技術で実現する「人・機械協調AI研究」を推進している。

 

AIが学習するためには、作業環境内のデータが必要となるが、データには機械自身のものに加え、支援対象である作業者のデータも含まれる。

 

そのことから、人が作業する実際の環境(フィジカル空間)の機械および作業者の情報をデータ化し、コンピューター上にあるサイバー空間で表現する「サイバーフィジカルシステム」の構築で、初めてAIの学習が可能となる。

 

サイバーフィジカルシステムの構築により、AIは人の作業を解析し、ロボットなどの機械を通じて、適切に人を支援することが可能となる。

 

サイバーフィジカルシステム研究棟では、その典型事例である、生産、物流、創薬の各分野の模擬環境を整備し、それらの「サイバーフィジカルシステム」を構築することで「人・機械協調AI研究」を加速する。

 

 

 

 

※)サイバーフィジカルシステム(Cyber Physical System):実際の世界(フィジカル空間)にある多様なデータをセンサーネットワークなどで収集し、サイバー空間で大規模データ処理技術などを駆使して分析/知識化を行い、そこで創出した情報/価値によって、産業の活性化や社会問題の解決を可能とするしくみ。

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。