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2019年11月28日【経済・社会】

パナソニック、半導体事業を台湾企業に売却

NEXT MOBILITY編集部

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パナソニック オートモーティブエナジー大連有限会社・外観

 

 

パナソニックは、11月28日の取締役会で、完全子会社のパナソニック出資管理(以下、PEMJ)の完全子会社「パナソニック セミコンダクターソリューションズ(以下、PSCS)」を中心に運営する半導体事業を、台湾の半導体企業、Winbond Electronics 傘下の「Nuvoton Technology(以下、Nuvoton)」に譲渡すること、ならびに同社と株式資産譲渡契約を締結することを決議した。

 

 

パナソニック・ロゴ

 

 

1.背景および目的

 

パナソニックの半導体事業は、過去数年来、AV分野から車載・産業分野にシフトするともに、イメージセンサなどの「空間認識」技術と、バッテリーマネジメント用ICやリチウムイオン電池保護回路用MOSFETなどの「電池応用」技術を注力分野と位置付け、これらの分野にリソースを集中することで事業成長を目指してきた。

 

一方、2014年4月に北陸工場(魚津・砺波・新井)の半導体ウェハ製造工程を、イスラエルの半導体ファウンドリ企業「タワーセミコンダクター社」との合弁会社に移管。

 

さらに同年6月にはシンガポール、インドネシアおよびマレーシアに保有していた半導体組立工場を、香港に本社を置く「UTACマニュファクチュアリングサービシーズ社(以下、UTAC社)」へ譲渡。

 

その後も国内外拠点の統廃合を行い、アセットライト化による事業リスクの低減を図り、競争力の強化に取り組んできた。

 

しかし、近年の競合他社の勢力拡大、注力事業への巨額投資、M&Aを通じた業界再編の進行等、競争が激化する半導体事業において、半導体事業を成長拡大させるためには、今後も事業運営の強化と継続した投資が必要になることから、今回、パナソニックの技術力、商品力を高く評価・活用し、持続的な事業成長が期待できるNuvotonの下での事業運営が最善と判断し、譲渡を決定した。

 

 

2.譲渡について

 

(1)譲渡前事業再編:パナソニックは譲渡の直前に次の通り半導体事業の再編を行う。

 

① PEMJの完全子会社であるパナソニック デバイスシステムテクノ(以下、PIDST)、パナソニック デバイスエンジニアリング(以下、PIDE)の全株式を、会社分割によりPSCSに承継させる。

 

② パナソニックおよび子会社が保有する半導体事業関連の知的財産権および契約の一部、 ならびに保有する半導体事業関連資産・負債の一部を、会社分割または資産譲渡によりPSCSに承継させる。

 

③ PEMJが保有するPSCSの全株式を、新たに設立するPEMJの完全子会社(以下、PSCS持株会社)に株式譲渡により承継させる。

 

④ PSCSの半導体関連部品(リードフレーム)事業を会社分割により新たに設立するPEMJの完全子会社に承継させる。

 

(2)譲渡の内容:上記「譲渡前事業再編」を前提に、来年6月1日を効力発生日(予定)として、次の通り譲渡を実施する。

 

① PEMJは、譲渡前事業再編後のPSCS持株会社の全株式をNuvotonに譲渡する。

 

② パナソニックが子会社を通じて保有しているシンガポール法人パナソニック アジアパシフィック(以下、PA)において、半導体の開発・販売事業を担当する社内カンパニーであるパナソニック デバイスセミコンダクターアジア(以下、PIDSCA)の事業を、Nuvotonのシンガポール法人に譲渡する。

 

③ パナソニック セミコンダクター蘇州(以下、PSCSZ)の半導体事業に係る設備・在庫等をNuvotonの中国法人に譲渡する。

 

3.その他

 

契約は、各国・地域の競争法当局その他政府機関の承認取得を前提としている。また、譲渡前事業再編を含む譲渡の実行予定日は、当該承認取得およびその他の許認可等に関する手続きにかかる期間を踏まえ大きく異なる可能性がある。

 

 

■譲渡による資本関係の変化

 

※PCN:パナソニック チャイナ/PHN:パナソニック ホールディングオランダ/TPSCo:パナソニック・タワージャズ セミコンダクター

 

 

[パナソニック半導体事業の沿革]

 

・1957年:松下電子工業(フィリップス社との合弁会社)高槻工場において半導体生産開始。

 

・1968年:長岡工場(京都府長岡京市、現 PSCS本社所在地)稼働。シリコントランジスタ/バイポーラIC量産開始。

 

・1970年:MOS LSI量産開始。

 

・1993年:フィリップス社との合弁を解消し、松下電器産業(現パナソニック)の100%子会社に。

 

・2001年:松下電器産業が松下電子工業を吸収合併。

 

・2014年:タワーセミコンダクター社と拡散工程の合弁会社設立。UTAC社へマレーシア、シンガポール、インドネシアの組立工場を譲渡。

 

・2015年:ソシオネクスト社へシステムLSI事業を移管。

 

・2019年:ディスクリート半導体事業をローム社へ譲渡(予定)

 

 

[会社概要]

 

<パナソニック セミコンダクターソリューションズ>

 

– 名称:パナソニック セミコンダクターソリューションズ株式会社
– 所在地:京都府長岡京市神足焼町1番地
– 代表者:代表取締役社長 小山 一弘
– 事業内容:半導体および関連部品の開発、製造、販売
– 設立:2014年3月10日
– 資本金・出資:4億円 パナソニック出資管理合同会社100%

 

<パナソニック デバイスシステムテクノ>

 

– 名称:パナソニック デバイスシステムテクノ株式会社
– 所在地:京都府長岡京市神足焼町1番地
– 代表者:代表取締役 中澤 省吾
– 事業内容:半導体関連の設計、開発
– 設立:1997年1月10日
– 資本金・出資:2億円 パナソニック出資管理合同会社100%

 

<パナソニック デバイスエンジニアリング>

 

– 名称:パナソニック デバイスエンジニアリング株式会社
– 所在地:富山県魚津市東山800番地
– 代表者:取締役社長 梶原 大平
– 事業内容:半導体関連の技術業務請負
– 設立:2000年3月1日
– 資本金・出資:2億円 パナソニック出資管理合同会社100%

 

<パナソニック デバイスセミコンダクターアジア>

 

– 名称:パナソニック デバイスセミコンダクターアジア
(英:Panasonic Industrial Devices Semiconductor Asia)
– 所在地:シンガポール
– 代表者:社長 下茂 智博
– 事業内容:半導体の開発、販売
– 設立:1978年12月1日
– 備考:パナソニック アジアパシフィック株式会社の社内カンパニー

 

<パナソニック セミコンダクター蘇州>

 

– 名称:パナソニック セミコンダクター蘇州有限会社
(中:蘇州松下半導体有限公司)
– 所在地:中国 江蘇省 蘇州市高新区鹿山路666号
– 代表者:董事長 小山 一弘
– 事業内容:半導体の製造、販売 車載カメラの製造
– 設立:2001年12月29日
– 資本金・出資:95億円 パナソニック チャイナ有限会社100%

 

<Winbond>

 

– 名称:Winbond Electronics Corporation(華邦電子股份有限公司)
– 所在地:台中市42881大雅區中部科學園區科雅一路8號
– 代表者:董事長 アーサー・チャオ(焦佑鈞)
– 事業内容:スペシャルティDRAM、コードストレージ用フラッシュメモリICの製 品設計、研究開発、ウェハ製造
– 設立:1987年9月29日
– 資本金・出資:398億台湾ドル  Walsin Lihwa Corporation 22.01%, Chin Xin Investment 5.0%

 

<Nuvoton>

 

– 名称:Nuvoton Technology Corporation(新唐科技股份有限公司)
– 所在地:新竹市東区新竹科学工業園区研新三路4号
– 代表者:社長 ショーン・タイ(戴尚義)
– 事業内容:ロジック集積回路(「IC」)の研究、設計、開発、製造、販売及び6イ ンチウェハの製造、試験、OEM
– 設立:2008年4月9日
– 資本金・出資:73億5,800万台湾ドル Winbond Electronics Corporation 61.55%

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。