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2018年11月5日【経済・社会】

SUBARU、完成検査不正によるリコール拡大。追加費用に65億円

NEXT MOBILITY編集部

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SUBARU・ロゴ

SUBARUは、9月末に国土交通省に提出した完成検査の不正に関する調査報告書の内容に誤りがあったことを認め、新たに判明した事項に基づき、リコールの範囲拡大を、11月5日に発表した。

 

これにより、一連の不正に関わる累計リコール台数は約53万台。今回の追加リコールに関する費用は、約65億円に上ると云う。

 

1.これまでの経緯と、今回判明した事実

 

SUBARUは、2017年10月以降判明した群馬製作所本工場と、矢島工場の完成検査の不正に関して、国土交通省の徹底調査の指示(6月5日)に基づいて、社外の専門調査チームによる調査を実施。9月28日に報告書を国交省へ提出し、その内容を公表した。

 

また同時に、報告書に基づいて、完成検査の不正が2017年12月末日まで行われていたと判断し、対象となる約6千台について、リコール実施を届出した(10月11日)。

 

その後、10月16日以降に国交省の立入検査が実施され、改めて確認を行った結果、「駐車ブレーキ制動力の検査中にブレーキペダルを踏む行為」等の不正の終期について、異なる供述が以下の通り得られた。

 

この結果に対してSUBARUは、今回、前回実施したリコールと同様の措置を、新たに判明した終期に基づき、延長して実施する。

 

 

以上に加え今回、SUBARUは、社外の専門調査チームは把握していたが、同チームの判断で報告書に記載されていなかったライン完成検査における下記2項目について、国交省から改めてリコールの是非及び、その理由について説明するよう指摘を受けた。

 

(1)前輪ブレーキまたは駐車ブレーキ検査時のギアが、D(ドライブ)レンジの場合とN(ニュートラル)レンジの場合とが存在すること。

 

(2)バンパーフェイスが未装着の状態で完成検査を実施している場合があること。

 

この指摘に対してSUBARUは、上記(1)と(2)についても、検査行為の一律性や一貫性を確保する観点上、適切ではないものと判断し、上記リコール対象に含めて対処することとした。

 

2. リコール対象車の期間延長

 

SUBARUは、上記各理由により、2017年12月以降も、完成検査工程の合否判定が不明確だったことを認め、供述によるリコール範囲を特定を止め、[下記3.]の対応により、検査工程の健全性が確認できた日までの期間(2018年1月9日~同年10月26日)に生産された日本国内向け車両、約10万台(車種は「インプレッサ」など「トヨタ86」を含む全9車種)について、10月11日に届出たものと同等のリコールを実施する。

 

結果、一連の不正に関わる累計リコール台数は、約53万台。今回の追加リコールに関わる費用は、約65億円が見込まれている。

 

なお、リコール届出には若干の時間を要するため、11月8日の届出が予定されている。

 

3. 追加で実施した再発防止策、今後実施する対策について

 

SUBARUは、公表済の①~④を含め、以下の緊急対策を実施した。

 

①ブレーキ検査装置(テスター)のプログラムの改修 (10月14日~21日)

 

・ギアをドライブ(Dレンジ)に入れたまま検査を行うことを不可能とする。

 

・駐車ブレーキと主ブレーキ(前輪・後輪)を同時に操作した場合、自動的に検査無効とする等。

 

②ブレーキ検査装置(テスター)に「輪止め」を設置(10月8日~18日)

 

報告書で検査員が不正行為動機と証言したとされる「テスター上で車両姿勢が変動する結果、ブレーキ検査結果が不安定になる」という現象の発生を止める。

 

③サイドスリップテスタの通過速度に関わる検査規格の見直し(10月17日および19日)

 

遵守が容易ではなく過剰であった規定の見直しを図り、検査の有効性を維持しつつ真に有意で遵守可能なクリープ速度程度の規格に改定。

 

④監視・相談員の配置(10月17日から実施継続中)

 

検査員の作業を監視するとともに、検査員が疑問にすぐに相談できるよう、熟練検査員を「監視・相談員」として検査ラインに配置。

 

⑤欠品車両および車両滞留時の措置(10月24日および26日)

 

バンパーフェイスに限らず、一つでも部品が欠品した車両の完成検査工程投入を禁止。また、完成検査工程で車両が滞留した際は生産ラインを一時停止し、検査業務に支障を与えないことを徹底する旨、製造本部長名で通達。

 

⑥再教育の実施(10月26日)

 

早番勤務・遅番勤務それぞれについて1時間生産ラインを停止して、標準作業遵守の重要性について教育を実施。座学ではなく、実際に検査ライン上で標準作業手順を確認し、国交省立入検査等での指摘事項も確認。教育後、検査員の理解と自覚も確認。

 

なお、SUBARUは、11月2日に再度終日生産ラインを停止し、10月29日以降一切の不正発生がないことを確認したとしている。

 

また今後、再発防止策を順次実行するにあたって、特に検査員の負荷軽減につながる以下のような施策を優先的に実施する。

 

・経年化し、作業負荷のある検査設備の更新・修繕・補強。

 

・標準作業遵守をより容易にするような検査設備の改良(自動化を含む)。

 

・検査員の人員増強、個々の検査員の適性を踏まえた配置見直し。

 

・人員増強とセットで実施する検査工程の見直し、工数計算の適正化。

 

・適正かつ整合性の取れた社内規程の再整備。

 

SUBARUは、設備更新など生産ラインの長期停止を必要とする施策は、基本的には年末年始等の長期連休を活用して実施するが、緊急性・有効性が高いと判断した場合には、躊躇なく臨時に工場を稼働停止して実行するとしている。

 

また、報告書で指摘された、経営陣の完成検査業務に対する認識および関与が不十分であったことについては、一連の問題を「企業風土」という体質的問題や、従業員のコンプライアンス意識の問題のみに帰結させることなく、経営トップが先頭に立って「品質第一」の意識を徹底し、現場に寄り添っていくとしている。

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。