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2020年3月3日【特集・解説】

楽天、月2980円のMNO始動。但し競合との激突は持ち越しに

坂上 賢治

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楽天モバイル・ロゴ 2014年当初、大手携帯電話キャリアから通信網を借り受ける〝格安SIM事業者(MVNO)〟として携帯電話事業に参入した楽天モバイルは2020年4月8日、自社独自の通信回線を「ネットワークの仮想化(Network Functions Virtualisation、NFV)」により立ち上げ「Rakuten UN-LIMIT(ラクテン アンリミット/月々2,980円)」の一択のみというシンプルな加入プランを引っ提げて、NTTドコモ、KDDI by au、ソフトバンクに次ぐ第4の商用サービス事業者(MNO)として再スタートを切る。

 

なお、これに併せて新事業開始前日の4月7日にNTTドコモ網・KDDI by au網を活用した既存のMVNO事業は新規回線申込みの受付を終了する。楽天は既存のMVNOユーザーに対して当面、同サービスの提供を続けていく意向ではあるものの、いずれMVNO事業は新たなMNO事業へ統合・移管されることになる。

 

 

これについて楽天モバイルの山田社長は「MVNOサービスの提供終了時期については、お客様の(新たなMNOサービスへの)移行スピードに因るため明言できないが、ご利用ユーザーにご迷惑をかけないように進めていきたい」と話している。

 

 こうして新たなスタートを切ることとなった新規NMO事業は、先の通りRakuten UN-LIMITという契約メニュー一択のみで提供され、国内通話・データ通信無制限を月々2,980円で実現した。

 

なお同プランは、300万名を対象に1年間の利用料が無料になるキャンペーンも併せて実施される。但し通話無料にはカラクリがあり、通話は他社でいう〝LINE電話〟と同じくインターネット回線を用いた通話・SMSアプリ「Rakuten Link(ラクテン・リンク)」を使用した場合のみ月々2,980円となるもの。

 

※ 楽天回線エリアは濃いピンク色の部分、薄いピンク色の部分はパートナー(au)回線エリア(2020年3月現在)

 

 またデータ通信に関しても現在、自社の独自回線網を構築済みである東京都・神奈川県・千葉県・埼玉県・愛知県・大阪府、京都府、兵庫県などの一部に限りデータ通信無制限となる。

 

ここであえて「神奈川県・千葉県・埼玉県・愛知県・大阪府、京都府、兵庫県などの一部」と表現した理由は、楽天回線のエリア区域内であっても、特定の建物内や地下では、現段階で楽天の回線が充分に到達しきれていないためで、こうした地域に於ける地下鉄移動時などでは、同社が新事業開始にあたって提携したKDDI回線を利用する状態となりかねない。ゆえにこうした場面の通信は、月々2,980円の対象とならないケースがある。

 

ちなみにそれ以前の問題として同記事を書いている3月段階では、おそらく解消されているかと思うのだが、2月段階に東京・汐留のソフトバンク本社ロビー(半地下)から行った発信並びに着信では、パートナーな筈のKDDI回線すらも現場で掴むことができず(通話による発信も着信できずに全滅状態)、少なくともその場に於いて、楽天モバイルの正規ラインナップ品である同社専用端末は不通となって携帯電話としての仕事を放棄した。

 

さらに余談であるが2020年6月段階で、編集子の行動圏である東京都心部に於いてもオフィス区画の半分のエリアで、楽天の電波も、頼みの綱である筈のパートナー回線のKDDI回線も未だ掴めていない(つまり半分の区画では不通となる)。一方で正規キャリアのSIMを差したKDDI純正端末ではau回線をシッカリ拾っている。これを踏まえると、楽天回線が途絶えた場合に〝即座にパートナー回線に切り替わる〟と謳われていても、大元の楽天回線自体の安定度が急激に低下すると楽天の基地局を経由したパートナー回線への切り替え自体が上手く行かず、不通になってしまうケースも時には起こり得るのだろう。

 

ゆえに以降、当編集部では楽天SIMのみによる端末運用が不安になり、DSDV(Dual SIM Dual VoLTE/運用機が2枚のSIMが格納できるデュアルSIM・デュアル電話番号対応機種だった)スロットに別キャリアのSIMを指し、2枚のSIM(2つの電話番号により、どちらに電話がかかってきても受けられる状態)で運用している。

 

 より詳しく料金プランの詳細をここで記すると、データ通信容量は楽天の自社回線エリア内での利用に限り無制限。楽天の自社回線エリア外では、国内外共に楽天と提携しているau回線網を使うことになるため、月あたりの通信量は2GBに制限される(記述追加=2020年4月8日から「Rakuten UN-LIMIT」の2.0へのバージョンアップ により、KDDI回線エリアのデータ容量を2GB/月から5GB/月へ、データ容量超過後の通信速度減速も最大128kbpsから1Mbpsに引き上げられた)。

 

通話とSMSに関しては「Rakuten Linkアプリ」を利用することで国内と海外からの利用が無制限となる。唯一、日本から海外への通話に限っては、月々980円でかけ放題となるオプションサービス「国際通話かけ放題」に加入する必要がある。

 

3月3日現在、東京・大阪・名古屋の3大都市で自社回線網整備を積極的に進めている楽天モバイルでは、上記以外の地域は期限付きでau回線を間借りすることで全国展開を実現している。ゆえに随時回線増強を重ね、いずれは地域を問わず100%自社回線網にすることを目指している。これについては具体的に「2020年6月に次世代5G通信サービスの提供を開始」。「2021年3月には、5Gの全国展開」を目指している。

 

 今回、これだけ低廉でシンプルなプランが実現した背景には、楽天が完全仮想化モバイルネットワークという新たな通信網の敷設方法を用いて設備投資や運用コストの大幅削減をした結果だ。

 

 

実は現在のドコモ・au・ソフトバンクなど従来から通信網の全国敷設を続けて来た旧来型の携帯電話ネットワークの仕組みは、携帯電話から基地局を繋ぐ無線通信処理部分を経て、音声や通信を司るパケットの交換機などのネットワーク機器などで永年、専用のハードウェア装置を利用してきた。これはいわゆる過去の1Gから始まる機械的なアナログ回線のインフラを引きずっているためだ。

 

従って既存の大手キャリア3社は、今回の5G通信網への進化にあたって、旧来の通信機器を利用しつつ、全国に敷設したハードウェア装置の改良を重ね、全国各地の通信網・通信機器の代替を徐々に進めていかなくてはならない。

 

対して楽天モバイルは新規参入の身軽さもあって、ゼロから日本全国の通信網を構築できる立場にある。そこで楽天モバイルでは、既存の通信ネットワーク機器の(機械)利用を最小限に抑え、汎用のサーバー上のソフトウェアを動かすことにより、携帯電話のネットワークを構築する動きに出た。

 

この取り組みには、高額でかさばる通信ネットワーク機器を利用しなくて済むという利点以外に、ソフトウエアの書き換えのみで素早く5Gへ通信網への移行が進められるという利点がある(結果、楽天モバイルとしてはハードウエア投資が削減できる。但し装置による機能をソフトウエアに代替させる同新方式は、世界初の試みであり、これが諸手を挙げて「成功する」かと問われれば、それについては今の所、未知数と言わざるえない)。

 

 楽天モバイルによると、新規契約の先行受付は、オンライン申込みが3月3日(火)16時から、店舗での申込みは3月4日(水)から4月7日(火)まで。商品発送は4月8日(水)以降、順次開始するとしている。また他のNMOサービスからの乗り換え契約はオンライン・店舗共に4月8日(水)から受け付ける。既に「無料サポータープログラム」で楽天回線やMVNOサービス利用者対象のプランは4月8日(水)以降に「my 楽天モバイル」「メンバーズステーション」で可能となる。

 

利用端末は楽天モバイル推奨デバイスに限られる。3月3日段階でApple製品のラインナップは存在しない。

 

キャンペーンと特典では、300万名を対象にプラン料金を1年間無料とするキャンペーンを実施。300万名を対象に開通月の翌月末までに「Rakuten Link」の初回アクティベーション(SNS認証の完了)をした場合、「楽天ポイント」3,300ポイントが進呈される。なお「無料サポータープログラム」の参加者はキャンペーンの対象外。

 

3月3日(火)から6月30日(火)の期間中、オンラインで同プランを新規契約し8月31日(月)までに「Rakuten Link」の初回アクティベーション(SMS認証の完了)をし対象者に「楽天ポイント」3,000ポイントが進呈される。プラン契約者を無料期間を含むプラン利用期間中「楽天市場」購入時にSPU(スーパーポイントアッププログラム)+1倍の対象とするなど。諸条件は楽天モバイル のサイトで確認されたい。

 

 現段階で、最大2万名とリアルな回線契約者が限られている「無料サポートプログラム」の範囲で実際に当編集部が楽天回線を利用した限り、通信ネットワークの速度は充分に速く、およそ最低限でも30から40Mbps程度の速度は安定して出ている(主な利用環境は、港区並びに千代田区が中心。時に横浜や千葉県での通信環境も試した/なお後の5月末段階では下り速度に若干の減速感が出ている。総務省からの割り当て周波数帯が実質1バントに限られている現段階では、加入ユーザーの拡大に伴い速度がスポイルされないかどうかは、まだ未知数だ)。

 

通信に関しては、一般の通常回線利用時に於いて通話が途絶えるなどの不具合が発生する頻度は限られている。今後、回線整備が進展していけば、これらの不具合はいずれ解消されるだろう。またRakuten Linkアプリ使用による通話では、あり得ない相手との対面通話を行うと、音声到達の遅延があることがハッキリ分かる。ただ相手と離れて通話する実際の電話としての利用であれば、通話相手とは遠く離れた状態で会話することになるため、遅延を気にする必要はなく実用利用は可能だ。

 

 

むしろ課題は、首都圏・中部・関西各エリアでの契約初期段階に、利用者の想定外で起こるau通信網の利用にある。これについては楽天から推奨・提供される端末上に搭載されたアプリ「My楽天モバイル」を立ち上げれば、いずれリアルタイムで利用している回線種別が〝楽天回線〟なのか〝au回線〟なのかが分かるようになるという(3月3日現在の時点では、楽天回線か、au回線かの判断は出来ない)。

 

 以上を踏まえ、現段階で首都圏・中部・関西の楽天独自回線エリアが主な活動範囲で、地下や建物内利用に於いて、リアルタイムで使用中の回線網を確認しつつ携帯電話を活用することが苦でない向きなら不満も少なく通信ライフを楽しめるだろう。勿論、エリア外であってもインターネット電話ではなく、一般的な電話アプリを使用した方の通話(30秒/20円)ではパートナー契約により正規に切り出されたauの通話網を利用できるため、ビジネス利用であればそちらを使った方が安定しているかも知れない。

 

一方、Rakuten Linkアプリを使用する通話やSMS利用は、楽天独自のエリア外の場合、通信量が2GBの範囲(3月当初の設定枠)に限られる。この場合、月の累計通信量が規定を超えた途端に通信速度は128kbpsに減速する(左記は3月3日の記事アップ時点で、楽天モバイルが発表した内容に沿ったもの)。1度、減速した際に楽天エリア外での高速データ通信を復活させるためには1GBあたり500円のコストが掛かる。

 

楽天モバイルによると、2021年3月に5Gの全国展開(現時点の基地局4400局から2万7400局へ拡大)を目指しているということであるため、容量無制限で通信量を一切気にせずに継続的に使い続けたい利用ユーザーは、契約・端末導入を今年末位まで待つ必要があるだろう。

 

つまるところ新たな楽天キャリアの場合、利用端末自体は携帯電話の格好をしているが月額2,980円の真の価値は「携帯電話機として利用する場面」にあるのではなく、モバイルルーターのように「データ通信網」の活用に対してその価格に見合う価値を見いだせるかどうかに掛かっている(記述追加=後に回線混雑などの状況により、場合によっては1日のデータ通信量が10GBを超えた時に通信速度が同日に限り、最大3Mbps程度に制限される可能性があることが判明した)。

 

専用アプリでの通話利用も含むデータ利用オンリーであっても、そこに月々2,980円の見合う利用価値があるのなら導入を検討するべきだし、データ通信自体に価格に見合う価値を認められない向きは導入すべきではない。実際、1億を超える消費顧客を抱える楽天が来る2028年迄に1000万モバイルユーザーを獲得すると宣言しても、ライバル達が犇(ひし)めく通信業界の反応は、現段階で浮き足立つこと無く冷ややかだ。

 

むしろ楽天が上位キャリアに移行したことで、低価格路線を敷く古巣のMVNO業界への波及影響がより早く現れるかも知れない。対して先行するMNO3社に向けた楽天の真の勝負は、今年末から来年度に向けて同社がどれだけ優れた通信品質を素早く確立出来るかに掛かっている。

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域の取材活動を経て同社出版局へ。コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に環境&リサイクル紙、車両ケア&整備ビジネス専門誌等の創刊誌編集長を歴任。独立後は一般誌、Web媒体上でジャーナリスト活動を重ね30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。