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2020年1月7日【テクノロジー】

日産、軽量遮音材を新開発。CES2020に出展

NEXT MOBILITY編集部

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日産自動車・ロゴ

 

 

日産自動車は、車両の静粛性の向上と軽量化を可能にする新しい遮音材「音響メタマテリアル」を、米国のラスベガスコンベンションセンターで開催されるCES 2020(Consumer Electronics Show 2020/開催:1月7日~10日/ブース:北ホール6306)に出展する。

 

 

 

 

日産は2008年頃、当時すでに電磁波領域で高感度アンテナなどに活用されていたメタマテリアルの技術に着目し、同技術の音響波への応用を目指して、研究を開始。今回、音響メタマテリアルの基本原理を解明し、高い遮音性能を持つ遮音材の開発に成功した。

 

この新遮音材は、周期的な格子構造とフィルムを組み合わせたシンプルな構造で、音が伝わる際の空気の振動状態を材料が制御。音の透過を抑制することで、ロードノイズやエンジン音など、車内に入る自動車特有の騒音を広い周波数帯(500-1200Hz)で効果的に遮断すると云う。

 

 

 

 

現在、この周波数帯の遮音には、主にゴム板などの重い板材が使われているが、今回の遮音材は、こうした素材に比べ、約4分の1の重量でありながら、同等の遮音効果を実現。さらに、シンプルな構造のため、量産化により、従来の遮音材に対し、同等あるいはそれ以上の価格競争力を実現する可能性もあると云う。

 

日産は、これにより、将来的には、車両重量への影響やコスト面から、これまで遮音材の使用が制限されていた車種への幅広い活用が期待できるとしている。

 

 

 

 

車両の軽量化は、燃費や電費の向上による環境負荷の低減などに貢献。静粛性向上は、移動時間をより快適なものとする。

 

日産は今回の「音響メタマテリアル」に加え、「ニッサン インテリジェント モビリティ」を今後も進め、ユーザーを未来へと導いていくとしている。

 

 

 

 

 

[開発者への一問一答]

 

日産の総合研究所で「音響メタマテリアル」の開発を担当するエンジニアの三浦進氏は、この新素材の開発の狙い、背景について、以下のように話している。

 

Q1: 新しい遮音材「音響メタマテリアル」について教えてください。

 

A1: 日産は、新しい遮音材「音響メタマテリアル」の開発に成功しました。格子構造の上にフィルムを貼るというシンプルな構造で、そのフィルムが音に対して効率的に震えるという特徴があります。これにより圧倒的な静かさと軽量化を両立します。

 

Q2: 音響メタマテリアルはどのような点が画期的なのでしょうか? また、どの程度軽いのでしょうか?

 

A2: これまでは、例えばゴムの板のような重い材料で音の侵入を遮ってきました。音響メタマテリアルは、従来の材料と比較して4分の1の軽さで同じ遮音性を実現します。圧倒的な静かさと軽量化を両立するということが新しいブレークスルーです。

 

Q3: 素材が軽いということによるメリットは何ですか?

 

A3: クルマを軽くするということは、電力消費量の削減や、運動性能の向上にもつながります。これまで重い遮音材を搭載できなかった車両にも今回の材料が適応できる可能性があります。

 

Q4: 音響メタマテリアルはどのような仕組みになっているのでしょうか? なぜ遮音できるのでしょうか?

 

A4: 音に対してタイミングよく膜が震え、震えることによって音を効率的に跳ね返すというのが特徴です。結果的に入ってくる音は小さくなります。音が伝わる際の空気の振動状態を材料が制御し、音の透過を抑制することで、ロードノイズやエンジン音など、車内に入ってくる自動車特有の騒音を広い周波数帯(500-1200Hz)で効果的に遮ることができます。

 

Q5: 音響メタマテリアルの開発のきっかけは何だったのでしょうか? また、なぜその必要性に日産が気づけたのでしょうか?

 

A5: 日産は2008年頃、当時すでに電磁波領域で高感度アンテナなどに活用されていたメタマテリアルの技術に着目していました。それ以降、同技術の音響波への応用を目指し、研究開発を行ってきました。今回、音響メタマテリアルの基本原理を解明することで、高い遮音性能を持つ遮音材の開発に成功しました。日産はEVのトップランナーです。2010年に初代リーフを出し、お客さまから色々な声を伺ってきました。そこから、静かさが快適な移動空間につながるということを理解しました。

 

Q6: 遮音性の研究を長年実施する中で、課題は何だったのですか?

 

A6: 自動車特有の「ゴー」というロードノイズです。EVによってエンジン音がなくなり、残るロードノイズをいかに消すかということが長年の課題でした。

 

 

 

 

■(日産)CES 2020最新ニュース:https://global.nissannews.com/ja-JP/ces2020

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

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1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

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経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

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1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。