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2023年2月13日【特集】

東京都に訊く、未来を見据えた〝100年プロジェクト〟

NEXT MOBILITY編集部

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「東京ベイeSGプロジェクト」その名に込められた想い

 

――そうした切迫感が〝東京ベイeSGプロジェクト〟の背景になっている訳ですね。

 

山本 ▶ はい。加えて、その東京ベイeSGプロジェクトの名称について我々は、〝ESG〟のEを小文字のeにして〝eSG〟と読み替えて表しています。

 

このeSGとした理由については、もう少し詳しく説明させて下さい。一般的にE・S・Gは〝環境・社会・ガバナンス〟に沿った事業活動の事を指していますよね。

 

しかし私たちは敢えてeを小文字に置き換える事で、そこに複数の意味を込める事にしました。例えばこの〝e〟はエコロジー、エコノミー、エポックメイキングなどの複数の意味合いを持たせています。

 

 実は、このような読み替えには、他にも幾つかのテーマ性が内包されているのですが、中でも東京ベイeSGプロジェクトには、我々が最も大切にしているテーマがあります。

 

それは小文字のeに続く大文字の〝S〟と〝G〟です。ここには〝渋沢栄一〟を表す〝S〟と、〝後藤新平〟を表す〝G〟が表現されているのです。

 

 今日に至る東京の歴史を振り返ると、現代の東京の礎を築いて来た先のふたりの先人は、持続可能性を希求し、先見性と確固たる信念、幾多の困難を絶え間ない努力を重ねて乗り越え、それぞれが思い描く夢を実現させました。

 

まず日本の資本主義の父と呼ばれている渋沢栄一氏は、生涯「論語と算盤」を唱えていたように日本全体が豊かになるためには、一握りのエリートが経済発展の利益を独占するのではなく、利益を社会に還元する事が大切だとする考えの下、持続可能な社会の実践に努めました。

 

対して元々は医師であり東京市長であった後藤新平氏は、関東大震災後の帝都復興計画の策定で、都市機能として重要と考えた幹線道路を敷く事により、人の流れや物流の変化を促すなど、50年・100年先の未来の人たちの暮らす社会を見据えた都市づくりを進めました。

 

 これを前提に、我々が打ち出した東京ベイeSGプロジェクトのコンセプトは、感染症・気候変動・エネルギーの3つの危機を前に、未来の東京のあるべき姿を描いていくべく、本来のESGの概念に〝環境・エコロジー・経済・革新〟を束ね、更に今から100年前に今の東京の種を蒔いた先人の精神を表す〝SとG〟で撚り合わせたものなのです。

 

小池東京都知事も、このお二人の先人を大変敬愛しており、そのスピリッツを拝借したいという想いも込められています。

 

――では、そうしたテーマ性を踏まえて、今後どのような都市づくりを東京ベイeSGプロジェクトは目指すのでしょうか。

 

山本 ▶ まずは〝自然〟と〝便利〟が融合するサスティナブルな都市を目指します。
自然では、生物多様性の保全や気候変動対策を掲げて、緑や環境を重視した都市づくりに取り組む事になります。

 

とは言っても、大都市・東京に林立するビル群を動かす訳には行きません。そこで実施計画の皮切りとして我々は、ベイエリアの埋立地を舞台に自然に立脚した都市づくりに挑戦します。

 

しかし都市の限られた区画の一部に、緑の自然を設けるだけでは全く意味がありません。そこで次世代モビリティや再生可能エネルギーなどの最先端テクノロジーを融合させ、自然環境の中に便利さが根付いている未来都市の姿を描いて行く事を考えています。

 

 そんな未来の都市づくりで柱となるのは2つの拠点です。
その1つは、東京ビッグサイトや物流ターミナル、商業エンターテインメント施設、東京2020大会関連施設など多彩な魅力を備えた〝臨海副都心〟。

もう1つは、東京湾の南側に位置する〝1000ヘクタールの広大な埋立地〟を配した中央防波堤エリアです。(※注:1000ヘクタールは埋立が完了する将来の数値)

 

まずは、これら東京のベイエリアを中心に新しい都市づくりを展開して行きます。自然と便利が融合した新しい都市づくり、危機を乗り越えたモデル都市としての姿を、東京から世界へ発信出来ればと考えています。

 

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。