NEXT MOBILITY

MENU

2017年12月1日【エネルギー】

トヨタ、米でバイオマスから世界最大規模の電気と水素と水を造る施設建設へ

坂上 賢治

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

なお該当のトライジェン拠点で、一日あたり発電する約2.35メガワットアワーの電力量は、米国の一般家庭約2,350世帯分の1日当たりエネルギー消費量に相当するもの。

また製造される水素約1.2トンという数字は、燃料電池自動車に換算して約1,500台の1日当たり平均走行距離に必要な充填量に相当する。

こうして生み出された電力の一部と水は、北米でトヨタの物流事業を担うToyota Logistics Serviceのロングビーチ拠点に供給される見込みだ。これにより同拠点は、北米で再生可能エネルギーの電力のみを使用するトヨタ初の施設となる。

 

 

水素ステーションを併設するメガワット規模のFC発電施設としては、世界初の取り組み

創り出される水素の方は、併設する水素ステーションを通じて、日本からロングビーチ港に到着する新車配送前の燃料電池自動車「MIRAI」への燃料充填。さらに10月から同港湾を拠点に実証実験中のFC大型商用トラックの燃料充填にも使用する。

 

ちなみに、このような水素ステーションを併設するメガワット規模のFC発電施設としては、世界初(2017年11月30日現在)の取り組みになるとトヨタ自動車では謳っている。

 

以上の取り組みについて、TMNAの戦略企画担当のグループ・バイス・プレジデントであるダグ・マーサ氏(Doug Murtha)は、「トヨタは、水素に大気汚染物質の削減と大気改善の大いなる可能性を見出し、20年以上にわたってFC技術の開発に取り組んできた。

Tri-Genは、持続可能なモビリティ社会の実現に向けた大きなステップであり、あらゆる事業活動においてCO2排出ゼロを目指す『トヨタ環境チャレンジ2050』における重要な取り組みのひとつとなるだろう」と語っている。

 

現在、米国カリフォルニア州では合計31基の水素ステーションが稼動している。そうしたなかトヨタは、本年9月にシェル・本田技研工業と共に同州北部への水素ステーション7か所の新設を発表。様々な企業や公的機関と協力して、水素ステーション網の拡充に精力的に取り組んでいると結んでいる。

 

 

一方で米国では、先に初期出荷時期を2019年中に据えたTESLAの電動貨物トラック“Tesla Semi” の価格が、航続距離300マイル走行可能(480km)のモデルで15万ドル(約1,670万円)。500マイル走行可能(800km)モデルが18万ドル(約2,000万円)であると発表され、既に予約金2万ドルで予約が開始されている。

 

米国当地では、“Tesla Semi” の車両価格が話題。大型・長距離輸送でも、水素かEVかの競争環境を生み出すことに成功

この価格は、当地に於ける低価格ディーゼルトラックの6万から10万ドル近辺との比較で、ディーゼル燃料並び消費オイルを含む整備費用とを秤に掛けた場合、ランニングコストが2割安くなることから100万マイル走行で25万ドルが節約できると謳っており、この価格競争力が当地で歓迎されている。

 

 

また動力性能も8000ポンドの荷重積載時に、0から60mphに至る加速タイムが20秒。5%の勾配を65mphで走行可能と発表していることから、力強さという面でも数値上の評価が高い。

こうした勢いに乗って米国大手スーパーのウォルマートが話題を独占するべく15台を早々に発注。カナダのスーパー大手ロブロウも、25台の試験的導入を発表する等、そもそも米国製品であるゆえのTESLAのブランド力も相まって、話題が大きく先行している。

 

 

ただ実際には500マイル走行車で、凡そ1MWhのバッテリーが必要と語られていることから、現在の相場感では、車両価格を上回るバッテリーユニットをどのように搭載するのかなどの別の話題も上がっている。

しかし少なくとも電動貨物トラックが、内燃機関搭載のトラックに対して優位性を訴えることが可能となったことを踏まえて、TESLAはこうした大型・長距離輸送の環境下でも、水素を使うトラックか、直に電気を使う電動トラックのいずれが優れているかという競争環境を生み出すことに成功した。

 

そうしたなか未来に於いて、水素を推進するトヨタでは、米国に対して早くも、この水素に対する疑問に応える時期に到達してしまったといえるだろう。

1 2
CLOSE

坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。