NEXT MOBILITY

MENU

2020年3月12日【テクノロジー】

トヨタ、塗着効率世界最高の新型塗装機開発

NEXT MOBILITY編集部

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 

 

トヨタ自動車は、車体塗装工程で従来から使用しているエアスプレー式の塗装機に代わり、静電気を活用し空気を使わない新型の塗装機(エアレス塗装機)を開発した。

トヨタ自動車・ロゴ

今回開発したエアレス塗装機は、世界初(*)となる新技術を駆使することで、塗着効率(塗装の際に噴霧した塗料に対して実際に車体に塗着する塗料の割合)を従来型の60%~70%程度から、世界最高(*)の95%以上に向上。

 

トヨタでは、このエアレス塗装機の導入により、グループの塗装工程におけるCO2排出量を7%程度削減できると見込んでいる。

 

また塗装ブース(塗料を吹き付けるエリア)下部にある未塗着塗料回収装置の小型化ができるため、塗装ラインのコンパクト化が可能になると云う。

 

トヨタは2015年に公表した「トヨタ環境チャレンジ2050」の一つとして、「工場CO2ゼロチャレンジ」の実現に向けた取り組みを進めており、この一環として、エアレス塗装機を開発。まず、高岡工場と堤工場に導入し、以降、他工場へ順次展開するとともに、トヨタグループ会社での導入やグループ外への技術供与も検討するとしている。

 

 

[塗装機の特徴]

 

従来のエアスプレー式の塗装機は、主に空気の力で塗料を微粒化し、微粒化した粒子を空気で車体に塗着(エアスプレー塗装)。このため、車体から跳ね返った空気に塗料の粒子が吹き飛ばされてしまうことから、塗着効率は60~70%程度。

 

これに対して新型のエアレス塗装機は、電気で塗料を微粒化(静電微粒化)するとともに、静電気を帯びた粒子が車体に引き寄せられるように塗着(静電塗装)。静電微粒化および静電塗装の技術により、微粒化された粒子の飛び散る量が大幅に減少することから、高い塗着効率が達成できると云う。

 

 

 

 

[高塗着率を実現した新技術]

 

1)塗料の吹き出し量を最適にした塗装機先端の円筒型回転ヘッド

 

静電微粒化技術は、極少量の液体を吹き出す美容器具等で用いられているが、今回、トヨタは、その技術を車体塗装に応用。具体的には、塗装機の先端にある塗料の吹き出し口を円筒型にし、その先端に約600本の特殊な溝を作るとともに、円筒型ヘッドの回転で生じる遠心力で、塗料を溝に流れ込ませた上で静電微粒化している。

 

これにより、微粒化された塗料の粒子を静電気で車体に塗着させるという世界初の技術を開発した。

 

 

2)近接塗装を可能にした高精度な電流制御

 

車体の凹凸により円筒型ヘッドと車体の距離が変動することで、電流が不安定になるが、このエアレス塗装機では、電流のばらつきを常時監視して、電圧を自動に制御。円筒型ヘッドと車体の距離を約10cmに保ちながら、一定電流での静電微粒化と静電塗装を可能とした。

 

これにより、塗料粒子の大きさのばらつきを回避し、高品質な塗装を実現した。

 

 

*:2020年3月現在、トヨタ調べ。

CLOSE

坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。